ストール研究会

研究会報告が届きました。前々回「試作のストール」のブログの画像を見ていただければお分かりの通り、経糸の浮きが表地の花織です。最近、小幅のものがメインだったので、やや大幅のものに対しての柄の組み合わせが気になった出来上がりでした。研究会での一番気になった指摘は布の光、艶でした。以前、見ていただいた小幅の布と比べると、確かに一目瞭然でした。これは確かにその通りです。

天蚕糸の魅力は何か? やはり一つには光、艶でしょう。もう一つには繭の持った緑系の色す。色と言っても淡い緑系の色ですが、この両者は糸の処理(精練)では正反対の性格を持っております。つまり光を取れば色は無くなり、色を取れば光は無くなります。これはどういうことかと言うと、天蚕糸の持つ色は、糸の色ではなく糸に含まれるセリシンが持つ色だと思われます。糸を精錬するとは、このセリシンを取って柔らかな糸に仕上げることです。ここでセリシンをある程度残すことをすると色が残ります。この兼ね合いの使い方です。しかし色を残しても永久的なことではなく色は結果的にはゆくゆくには退化してゆきます。色は永久的ではありません。昔には色のことは言わず、しっかり精錬をしたものが普通使用の糸でしたでしょう。ただ、生皮苧(本来は麻の言葉)状態の糸の取り方では色はかなり強く残ります。しかしこの糸は製糸された糸ではありません。ちなみに昔の記述には天蚕糸の色を、「淡イ緑 或ハ橙黄色ヲ呈ス」とある。

今回のストールは色を取りました。光がないとの指摘は慧眼です。それに、物に反射する光は布の凹凸と密度にもよって影響します。これ以上のことになると難しくなりますので、このぐらいにしておこうと思います。

経糸はまだ数枚分ありますので、以上を踏まえて光の方を取ったストールを試みてみます。


※三種類の精錬の違い

画像では分かりにくいかもしれませんが、左は約70% 中は約85% 右は100%の灰汁精錬。左は緑残るが光の反射なし、右は光って光の反射あり、中はそれらの中間位置。

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